第3章 47話 春ヶ原の冷たい風

「空に湧く泉だよ」


 夏澄より先に、飛雨が身を乗り出した。


「雪割草の精霊が、春ヶ原の空で、そんな泉を見たっていっていたんだ。ここにそんながあるのか?」


「空に湧く泉ですか……?」


 優月は瞳を瞬かせる。

 しばらく考え込むようにしたあと、顔を上げた。


「それは、もしかしたら……」


 優月がはっとしたように言葉を止めた。


 ふいに、冷たい風が吹いたからだ。


 風には、ここにないばずの枯葉が混ざっていた。風花たちのいる場所を通りすぎ、泉の近くに吹きつける。


 すると、風が当たったところだけ、しろつめ草が萎れ始めた。


「立貴っ、頼むっ!」


 優月が叫ぶ。


 立貴は顔を強張らせ、素早く立ちあがる。

 懐からなにかを取り出した。

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