第4章 4話 春ヶ原へ

  あの日から今日まで、飛雨は尽力してくれている。


 わざわざ、風花の家に通ってくれる。


  深夜なのは問題かもしれないが、人目は避けなければならない。


 それに飛雨だって、夜更かしは疲れるだろう。

  彼は思ったより、ずっと優しいのかもしれない。


「ねえ、夏澄くんたちはどうしてる?」


  痺れていた足が元にもどると、風花はロッキングチェアにすわった。


「んー?  泉の手がかり探して飛びまわってるぞ」


 飛雨はベットで両手足を伸ばした。


「今日は北の渓谷に行ったよ。……それから、春ヶ原の様子も見に行った」


  春ヶ原という言葉に、風花は苦い気持ちになる。飛雨も顔を曇らせた。


「夏澄くん、やっぱり気にしているんだね」


「ああ、もし春ヶ原が、またあの風に襲われたら……」

「そうだよね」


 風花は目を伏せた。

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