第6章 11話 優月は禁足地に

 やがて、林に霧が流れ始める。

 霧は幻影の優月の姿を覆う。


 幻影の優月の姿は見えなくなった。


「こんな風に、姿を消すこともできるよ。……春ヶ原には、立貴が籠もっていた禁足地があったんだよね? もう一度、そんな場所を造るのはどう? 今度はそこで優月が休むんだ。俺、なんでも協力するよ」


 霧は風花たちや優月のほうにも流れてくる。


 卯の花色に近い、暖かい色をしていた。霧は風花たちを包み込む。

 やわらかい布のような感触がした。


 思わず、風花も頬を寄せて目を閉じた。


「暖かいね、夏澄くん。こうやって眠るのは、きっと開放だね……」


 夏澄は風花を振りかえる。なにもいわず、瞳だけを細めた。


「……どう? 優月」

 夏澄はしばらくうつむいた後、そっと声を出した。

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