第6章 12話 優月の嘘

 夏澄は恐る恐るというように、首を優月のほうに向ける。なにかを強く願うような瞳をした。


 優月に視線を向けた夏澄は、ふしぎそうに首を傾ける。


 無垢な瞳で、ゆっくりと辺りを見まわした。


 優月の姿は、いつの間にか、結界内から消えていた。


「夏澄っ!」


 飛雨が叫ぶ。険しい顔で、結界の外に駆け出した。


 風花は視線を巡らせる。


 優月は遠く川下のほうにいた。足を引きずりながら、川沿いを歩いていた。


 木々で体を支えながら、足を進めていく。


「騙してすみません、夏澄さん」


 優月は振りかえり、かすかに唇を動かした。

「でも、私はもういいんです。きっとこれからも、無意識に春ヶ原を襲ってしまうでしょう。このまま、眠らせてください」


「なんで、優月……っ」


 夏澄は、大きくて青い瞳をみはって立ちつくす。

 透きとおった青い瞳に涙が浮かんだ。 

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