第6章 12話 優月の嘘
夏澄は恐る恐るというように、首を優月のほうに向ける。なにかを強く願うような瞳をした。
優月に視線を向けた夏澄は、ふしぎそうに首を傾ける。
無垢な瞳で、ゆっくりと辺りを見まわした。
優月の姿は、いつの間にか、結界内から消えていた。
「夏澄っ!」
飛雨が叫ぶ。険しい顔で、結界の外に駆け出した。
風花は視線を巡らせる。
優月は遠く川下のほうにいた。足を引きずりながら、川沿いを歩いていた。
木々で体を支えながら、足を進めていく。
「騙してすみません、夏澄さん」
優月は振りかえり、かすかに唇を動かした。
「でも、私はもういいんです。きっとこれからも、無意識に春ヶ原を襲ってしまうでしょう。このまま、眠らせてください」
「なんで、優月……っ」
夏澄は、大きくて青い瞳をみはって立ちつくす。
透きとおった青い瞳に涙が浮かんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます