第6章 10話 時間は巡る
「ねえ、優月……」
夏澄はためらいがちにささやく。
「こんな風に木々に囲まれて眠るっていうのはどう? 好きなだけ眠って暮らすんだ。眠りは開放だよ。そうしていれば、きっと気持ちも変わる……」
蜜柑の林に風が吹く。
花びらが舞い、幻影の優月の頬を撫でた。
やがて、登っていた幻影の太陽が沈み始めた。
辺りを夕焼けが包み、すぐに夜闇に変わる。
少しして、また朝になった。
夏澄は幻影の時間の流れを早めている。
足元に青い草が伸びてくる。茜色空の下、虫が鳴く。
白い空から雨が落ちてくる。 春ヶ原にたくさんの花が咲いた。
夏澄が映す幻影は、皆、浄らかだ。
駒草や福寿草、山の野草が芽を出し、花をつけ、種を落としていく。
桃色しろつめ草もたくさん花をつけ、息を飲むくらいの桃色になる。
幻影は何度も時間を巡らせ、春ヶ原は一層美しくなった。
幻影は何度も季節を巡らせ、花を咲かせた。
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