第6章 9話 春ヶ原の花

 生き生きとした夏澄の笑顔は、水面に反射する光のように輝いていた。


 なにがいいかなと、地面にすわり、考え込み始めた。


「森……、それよりも、花がいいかなっ。あの辺には、すすき野原もあったよねっ」


 夏澄は声を弾ませ、風花を振りかえる。


「ねえ、風花。風花はなにがいいと思う?」


「優月さんだったら、花がいいかな」


「そうだよね。どの花がいいかなっ。俺、最高の幻影をつくるよっ」


 夏澄はまたなにかを考え込む。

 ずいぶん長い間そうしていた後、瞳を閉じた。


 夏澄の澄んだ水色の霊力が辺りに広がる。

 そのうち、空の風景がさあっと変わった。


 青い青い空が現れる。御泉公園の木々が見えなくなり、蜜柑の木の林が現れる。

 蜜柑の木はたくさんの花を咲かせ、辺りを白く染めていた。


 木々の根元には誰かがいる。地面に体を横たえ、すうすうと寝息を立てていた。


 顔は見えないが、服装からすると優月だ。

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