第6章 28話 優月の悲しみ

「どうしたの? ほんとこのごろ変だよ」


「すごーい。風ちゃん、難しいこと考えるね。大人だねーっ」


 大人なんかじゃない……。

 夏澄くんたちに比べてたら、全然……。


 優月さんはどうしているだろう。

 風花は窓の青空を見上げた。


 ニ日前の、春ヶ原でのことが思い出された。


 よみがえったとき、優月の霊力は強くなっていた。悲しい風を制御できるようにもなっていた。


 初めは戸惑っていたが、だんだんと落ち着いていった。そして、これからは自分の力でも草花を護っていこうと決めたようだった。


 草花を護れれば、悲しみも重ならない。溜め込んだ思いが暴走して、春ヶ原を襲うこともなくなる。


 でも、と風花は思う。


 これからも、優月さんの悲しみは続くだろう。

本当に解決したわけじゃない。


 霊力を持った優月は、内側から輝くような笑顔でいた。

 前よりも大人びた、優美な笑顔だ。


 それでも、風花は喜ぶことができなかった。

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