第6章 27話 三つ葉の形の雲

 十二個目……。

 

 風花は机に頬杖をつき、空を眺めていた。

 休み時間で教室内はざわめいている。


 今日は風が強く、太陽の前をいくつも雲が通りすぎて行く。十二個目の雲は三つ葉の形をした雲だった。


 三つ葉は草花を連想させる。


 草花ちゃんは、春ヶ原を襲っていたのは優月さんだと知らないで済んだ。おかげで、春ヶ原はやっぱり夢の世界のままでいられた。


 でも……。


 優月さんの悲しみが消えたわけじゃない。


 天を仰いだとき、ひろあがぴたぴたと風花の頬を叩いた。


「しっかりしてー、風ちゃん」


「ほんと、今日は一段と呆けてるよね。いい加減にしっかりしなさいって」


 ひろあに続いて、香夜乃がいった。

 香夜乃は風花の机の横に仁王立ちしている。


「さっきの授業だって、全然聞いてなかったでしょ」


「そうだったっけ?」

「しっかりしなさいって」


「ねえ、ひろあ、香夜乃……」

「なあに? 風ちゃん」


「現実……」


「は?」


「現実って厳しいよね。どうして、優しい精霊、……じゃない、人が悲しい思いをするのかな」


 香夜乃は怪訝な顔をする。

 ひろあは感心したように目を輝かせた。

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