第4章 30話 「雨が降ったら逢いにくるよ」

「水蒸気の粒はすごく小さいから、光っていても見えないの。でも、絶対光ってるはずなの」


「……だとしたら、雲は光であふれているね。見えたら、どんなにいいだろうね」

「青い空がね、水蒸気の粒で輝いて、海みたいにまぶしい空になるね」


 きっと、夏澄くんみたいに……。


 風花はずっと、空を見つめていた。夏澄も同じだった。


 光を秘めているはずの雲が、風に乗っていく。薄く薄く流れていく。


 やがて、オレンジ色の夕日が差してきた。


「ねえ、夏澄くん。巻層雲の次の日は、よく雨が降るんだよ」


「そうだよね。明日は雨だといいな」

「雨は好き?」


「もちろんっ。雨は俺たちにとっては浄らかなものだよ。もし、雨が降ったら、また、風花に逢いに来るよ」


 夏澄の瞳がきらめく。


 ……逢いに来るよ。


 風花は心の中で、彼の言葉を何度も繰り返す。 目を細め、ひざに顔を埋めた。

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