第5章 39話 立貴との出逢い

「私たちはまず、しろつめ草に霊泉水を撒くことから始めました」


 ああ、と、夏澄は顔をあげる。


「あの辺りは、霊泉が豊富なんだよね」

  星水粒の光が、彼をうっすらと青く染めていた。


 「一番近い霊泉は、二つ向こうの山にありました。そこから、霊泉水を運びました」

「すぐ効いた?」


「ええ。すると、葉はよく茂るようになり、匍匐茎も伸び、池くらいの大きさになりました」


  よかったよねと、夏澄は微笑む、


「その頃には、私たちが運ぶ水では足りなくなっていました。それで、私たちは南の湖に住む湖龍に、春ヶ原に霊泉を湧かせてほしいと、祈願に行きました」


「そういえば、蓮峯山の辺りには守護龍がいるのよね」

「守護龍……?」


 スーフィアの言葉を、飛雨が聞き返す。


「へえ、なんかかっこいいな」


「ありがとうございます。春ヶ原から南にある、明日野湖に住む龍です。明日野湖の湖龍の一族は、あの辺りを護ってくれているのです」


「すごいな。龍に護ってもらうなんて、オレたち人間の憧れだよな。例えるなら、一日パパだ。なあ、風花」


いいながら飛雨は、風花をじっと見る。


「う、うん。そうだね」

  風花は目を瞬かせた。


「オレは冗談をいったんだぞ。わらってみろ、風花」

「意味が分からないよ?」


 渾身の冗談だったんだぞと、飛雨は眉を寄せた。

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