第4章 19話 夢の世界の裏には
一本の木蓮が完全に葉を茶色に染めていた。
雨が木蓮に降り注ぐ。
だが、葉の色はなかなか元にもどらなかった。
ひどい……。
春ヶ原全体を眺めた風花は、へたり込んだ。
立貴の雨は木蓮に集中している。野原に降る雨が少ないせいか、しろつめ草は枯れたままだった。
野原に、一本二本と茶色い筋が横切っている。
植物を枯らす風が通ったあとだ。
夢……。
ここは優月さんたちみんなの夢の世界なのに。
『夢の裏には厳しい現実があるんだよ』
飛雨の言葉が思い出された。
こんな日にどうして?
誰が?
なんでこんなこと。
風花は空を見あげる。探っても答えは見つからない。
夏澄や優月に分からないことが、風花に分かるわけがない。
もし、霊力があったら……。少しは役に立てるのに。
枯れた草の香りが漂ってきた。
かさかさと乾いた葉の音がする度に、風花の鼓動は早くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます