第4章 18話 枯れ葉が混ざった風

「夏澄たち、どうしたの?」


「だいじょうぶ。すぐもどってくるよ、草花ちゃん」


「夏澄たち宝探しで疲れてるのに。もっとお昼寝したらいいのに」


  風花は夏澄の消えた方向を見つめる。どきん、として振り返った。


  ふいに、冷たい風が吹いたからだ。

 前に春ヶ原を枯らせたのと同じ、枯れ葉が混ざった風だ。


 動物たちが怯えたように、草花や優月に駆け寄る。


  風に当たった植物が枯れていく。今回の風はいく筋も吹きつける。


  あっという間に三分の一の葉が枯れ落ちた。


 風花は駆け出した。


  風が草花のほうに向かっていったからだ。


 だが、間に合わない。風には届かず、指先をかすめただけだ。


 草花が、優月と動物たちをかばうように立つ。


 寸前で、風は立貴の霊力で消えた。


  風花は立ち止まって耳を澄ませた。


 風花をかすめたとき、風がなにか悲しげな音を立てた気がしたからだ。


「夏澄くんっ」


 風花は思わず叫んで辺りを見回す。だが、当然夏澄の姿はない。


 立貴が駆け出し、水晶玉を空にかざした。


 水晶玉が輝き、風を消す。 光が空に伸び、上空に泉ができる。

 泉から降る雨は葉を蘇らせた。

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