第4章 17話 夏澄を追う精霊

「あっ、思い出した」


 ふいに、草花がぱあっと顔をあげた。


「ねえ、ねえ、夏澄。夏澄はスーフィアの他にも、精霊さんのお友達がいるよね」


  期待のこもった目を輝かせて、じっと夏澄を見つめる。


「今度、ここに連れてきてよ。草花ね、お友達になりたいの」


「うん……、でも、みんなは遠くで暮らしているからね。俺と旅をしているのは、スーフィアだけなんだ」


  あれ、と、草花は瞳を瞬かせる。


「でもね、森の動物さんたちが、夏澄のあとを追いかけてる、若い精霊のお兄さんがいたっていってたよ。すごく霊力の強そうな精霊さんで、今日も来てたってよ」


「俺のあとを?」

 夏澄はふしぎそうにする。


「そんな精霊の気配は感じなかったよ」


 飛雨がすばやく辺りを見回した。


「……夏澄に分からない。なら、夏澄より霊力が強いってことよね」


 スーフィアの頬に緊張が走った。風花も、どきどきしてくる。


 夏澄より霊力が強い精霊は、ほとんどいないはずだ。風花が知っているのは、藤原の御泉の消えた精霊だけだ。


「俺、ちょっと見てくる」


「私と飛雨も行くわ。優月さん、扉を開いてもらっていいですか」


  夏澄たちの姿は光のカーテンの向こうに消える。


 風花は二、三歩歩いて足を止めた。夏澄を追いかけたいが、とても追いつけなかった。

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