第4章 16話 宝探しの景品

「ビー玉、疲れて眠っちゃった」


  わらい声をころし、草花はひざの上で眠るビー玉を撫でている。


 ビー玉は蜜柑をひとつ抱えている。


 宝探しの蜜柑をビー玉はたくさん見つけたが、 ビー玉はそれを皆に分けた。

 自分の取り分はひとつだけだ。


「ねえ、夏澄。夏澄たちはちゃんと楽しかった?」


 草花は無垢な瞳で、周りを見回す。


「風花はどう? 楽しかった?」

「うんっ。すごく楽しかった。ありがとう、草花ちゃん」

「えへへ。よかったー」


  そんな草花を、立貴が遠くから優しく見つめていた。


 彼は桜の木陰にもたれている。 彼は宝探しには参加しなかった。


 ほとんどの時間、一人で過ごしている。 周りともほとんど話さないし、無表情だ。風花たちは声を聞いたこともない。


  そんな立貴だが、草花たちを見てたまに頬を緩める。


 優月のことは慕った瞳で見る。


  離れていても、絆の強さを感じた。

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