第4章 15話 いらっしゃいませ

「分かるよ。うれしいよね。俺たちを招待してくれるなんて、思ってなかったもんね」


 風花は夏澄たちと、山頂の中央に立つ。すると、目の前の空間が輝きだした。


 光のカーテンの扉が開いて、春ヶ原が姿を現した。


「いらっしゃーい、夏澄たちー」


  まず、草花の声がした。

 彼女はぴょんと木の上から飛び下りて、扉の内側に立つ。


「来てくれてありがとうー。草花、うれしいよ」


「本当に、遠いところへわざわざ。草花の招待を受けてくれてありがとうございます」


 優月が優しい笑顔でおじぎする。


「っていっても、まだ準備できていないの。お散歩でもしながら待ってて」


 草花は休息場に駆けもどった。地面に積まれている蜜柑を、しろつめ草の野原に隠したり、川の砂の中に埋めたりする。


「宝探し大会をするそうですよ」


 優月は苦笑する。


「誕生日会のメインの遊戯なんです。草花が昨日、一生懸命考えてました」


  花が舞う中で、草花は走り回っている。

 桃色の花吹雪の中の草花は、本当にかわいらしかった。


  きれいすぎる風景に、風花は目を細める。


 桃色の野原。野原を流れる川。本当に、ここは夢の世界だ。


 世の中には、こんなふしぎな世界がある。


 知ることができてうれしい。

 みんな夏澄くんと出会ったおかげだ。

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