第4章 20話 英語の授業

 眠い。もうだめ。


 風花は教科書で顔を隠し、目を閉じた。 閉じた途端、意識が薄れていく。


 がくっと頭が下がり、驚いて目を開けた。


「どうしたの? 風ちゃん」

 となりの席の、ひろあがささやく。


「先生が見てるよ」


  ……。

  風花は半開きの目で教卓を見た。


 黒板の前の英語教師は、ちらちら風花の様子を窺っている。

  今日は機嫌がわるそうだ。


 英語教師の木下は、風花のクラスの担任でもある。三十代で、長い髪をきっちりアップにしている。 眼鏡が似合う知的な美人だ。


 あだ名はケンカちゃん。

  相性がわるい古典教師の国原、……ケンカくんと、いつも喧嘩をするからだ。


  きっと今日も、生徒たちの目の前で子供のような喧嘩をした上に、校長室に呼び出された。だから機嫌がわるいのだろう。


  風花は無理矢理、姿勢を正した。


  木下は普段は優しいが、機嫌がわるいと人が変わる。


 でも、眠い。


  風花は袖で目を覆った。


 昨日、霊力の訓練をしているときは頭が冴えていた。だから、そのまま徹夜した。


 授業も気合を入れれば、だいじょうぶだと思ったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る