第2章 34話 網を抜けて

 スーフィアは風花を振りかえった。


 そっと窺ってみる。

 やはり、風花はローフィと印象が違う。大体、ローフィが持っていた強大な霊力を感じない。


「ね、飛雨……」


「なんだよ」

「なんであの娘は、七回も夏澄のところに来たのかな」

「知るかよ」


 飛雨は苛立ちを隠さない。


「飛雨はしっかり見張っていたんでしょ?」


「ああ、あの女……。じゃない、風花は、隙間から入り込みようにして、いつの間にか網を抜けてるんだ」


 飛雨は苦々しくいう。


「昨日だって、オレがちょっとよそ見したときに、ぱあっと中洲に渡って、夏澄を見つけてさ……」


「よく考えると、おかしいわよね」


 スーフィアは夜空を見上げ、瞳を閉じた。なんだか疲れてしまった。


 どこからか、風花の名を呼ぶ声が風に乗ってきた。風はスーフィアの金の髪を揺らす。


 風花の兄だという少年が、名を呼びながら駆け寄っていた。

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