第2章 35話 妹が可愛くて仕方ない

「お前、いないと思ったら、林なんかに入り込んでいたのか?」


 危ないだろと、彼は続ける。


 風花にはあまり似ていない。物腰柔らかな少年だ。


「つ、月お兄ちゃん?! なんでここに?」


 風花は、ハーフアップの髪とリボンを揺らして慌てる。ああいう可愛らしいところは、ローフィに似ている。


 そんな風花に、彼は忍びわらいを漏らした。妹が可愛くて仕方ないらしい。


「ひろあちゃんたちが教えてくれたんだよ。こんなところまで来たら、日が暮れて危ないって」

「だって、まだ七時前……」


「この場所がだめなんだよ」

 ごめんなさいと、風花はうなだれる。


「早く帰ろう」


 でも、と風花は霊泉に目を走らせる。


 兄は強く、風花の手を引く。風花はやがて、諦めたように帰っていった。

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