第2章 33話 飛雨は過保護

「じゃあ、全然関係ないのか?」


「そう、はっきりとはいえなくて……」


 スーフィアは言葉につまる。

「お前にも分からないこと、あるんだな」


「あたり前でしょ。はっきり別人だというには、風花とローフィは本質が似ていて……」


 飛雨は頭をかき回した。


「やっぱ、記憶消しとけば……」


 本当に。と、ため息が出る。

「消せてたら、夏澄も忘れてくれたかもしれないのにね」


 でも夏澄はと、飛雨はかすれた声でいう。


「でも夏澄、口にはあんまり出さなかったげどさ、本当は風花の記憶を消すの、かなり嫌がっていたと思わないか?」


「……思うわよ」


「夏澄も七回も、よく我慢してくれたよな」


「夏澄、風花といると、ほんと楽しそうじゃない? なら、消さないでいいかなって、私も思っちゃったのよ」


夏澄がローフィといたのは、もう遠い遠い昔のことだ。それでも夏澄は未だ、彼女を強く想い続けている。


 求める気持ちが募ると、ひどく疲れた顔をして、崩れるように眠ってしまうことがある。


「そうだよな。夏澄は幸せそうだった」


 でもと、飛雨は髪をかき回す。


「これから、夏澄はもっと傷つくかもしれないぞ。どうするんだ」


「飛雨、過保護」

「過保護じゃないっ」


 いらいらすると舌打ちし、飛雨は地面に直にすわり込んだ。

 夏澄がー、夏澄がーと、繰りかえした。

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