第5章 58話 無意識の想い
夏澄は地面についていた右手を持ち上げ、見つめる。その手を伸ばし、空のほうに掌を向けた。
夏澄の手が水色に光り出す。
彼の掌の上に、星水粒が数個現れる。幻術だろう。
星水粒は宙に浮き、ゆっくりと優月のほうに向かっていった。
星水粒を上目遣いで見ていた夏澄は、口元を引き結んでうつむく。
上げていた腕をもどすと、星水粒も霞んで消えた。
夏澄はまた、杉に深くもたれた。
「そう、優月はそんなことをいっていたの」
スーフィアがぽつりといい、風花を見た。
「はい、草花ちゃんが動物たちのために、弱ってばかりいるって」
「優月はずっとつらい思いをしていたのね。ずっと、気持ちを抑えていたんだわ。なら、きっと風を出していたのは無意識ね」
「無意識、ですか?」
「優月は本気で風の原因を探ろうとしていたもの。抑えられない気持ちが無意識に出てきちゃったの」
草花ちゃんは何度も弱っている。
優月さんはずっとつらかったんだ。 春ヶ原は夢の場所だと思っていたのに。
夢の裏には厳しい現実がある。
飛雨の言葉が思い出された。
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