第5章 57話 優しい光

 どこからか、葉擦れの音が聞こえてくる。

 ざわざわとした低い音だ。


 あまり風がないわりに、音だけは大きいのがふしぎだった。


 広場に映っている杉の影が、小刻みに揺れていた。


 風花たちは櫓の横に並んですわり、杉林を眺めていた。


 優月は離れた場所で杉にもたれ、山々をぼんやり見つめている。


 遠くに見える山は霞んで、少しだけ青く染まっている。

 雲の間から陽射しが幾筋も漏れ、線を描いて差込んでいた。


 痛いようだが、優しい光だ。


 だが、優月の心はきっと、なにも見ていないだろう。


 夏澄はたまに、優月に瞳を向ける。


 そのまま立ちあがり、足を踏み出すが、すぐにうつむいてすわり直す。

 そんなことを繰り返していた。

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