第3章 27話 「オレは精霊の眷属だ」

 風花はそれも仕方ないと諦めていたが、飛雨は違った。


 扱いのわるさに、事実誤認だ、オレは水の精霊の眷属だ、と喚いていた。


 スーフィアがこっそり話してくれたが、飛雨は水の精霊の一族に入ったわけでも、もちろん水の精霊になったわけでもない。


 霊力の色が水色になったり、体質が精霊に似たりと、少しずつ自分を精霊に近づけているだけだ。


 だが、もちろん、精霊のように霊体にはなれない。これからだって、それだけは無理だろう。


 ただ、話は合わせてやって欲しいと、スーフィアは手を合わせた。


 雨粒が落ちてきた時、風花は雨をまともに目に受けたが、飛雨は避けた。

 目くらましされなかった飛雨は、夏澄たちの前の空間が縦に割れて、カーテンのように開くのを見たそうだ。


 カーテンの空間の向こうは、一面に桃色の花が咲く野原だった。


 割れた空間の際には青年の精霊が立っていた。

 夏澄たちに一礼し、中へと招く。


 夏澄たちが足を踏み入れると、つながっていた空間は消えたと、飛雨はいっていた。

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