第6章 41話 春ヶ原に掛かる虹

 風花は春ヶ原をゆっくりと眺める。


 一面の桃色しろつめ草に、それを囲んでいる色とりどりの花が咲く木々。


 真ん中にある泉と、優月が宿る蜜柑の木。


 優月が護った春ヶ原は、涙が出そうなくらい美しかった。


 駆けてきた草花が、夏澄と風花に細い腕を回して抱きついてきた。


「ねえ、夏澄ー。さっきの約束お願いー」


 いって、手を合わせる。

 夏澄はうなずき、幻術で大きな虹をつくった。春ヶ原の端から端に渡るような虹だ。


「すごいー、水の精霊さんって本当にすごいねーっ。行こう、優月っ」


 草花は優月の服を引いて、虹の上に登った。


「追いかけっこしようっ!」

 きゃーきゃーいいながら駆け出す。


「風花、俺たちも混ぜてもらおう」

 夏澄は風花をもう一度、お姫さま抱っこする。虹の一番上に降り立った。


 駆けてきた草花とぶつかりそうになる。草花はきゃあきゃあ叫んで引き返していく。


 それから風花は、本当に足が動かなくなるまで、追いかけっこを続けた。

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