第5章 15話 夏澄の瞳

『風花、一歩踏み出してみて』


 夏澄の声は続く。 いわれた通りにすると、周りの空間が歪んだ。


 気がつくと、水の幕で覆われた空間の中にいた。霊泉の結界だ。


「来てくれてありがとう」


 結界の中で、夏澄は飛雨と並んで立っていた。


「ううん、わたしのほうこそ、呼んでくれてありがとう。スーフィアさんは?」


「春ヶ原に優月を迎えに行っているよ」


 笑顔でいた夏澄は、ふいにふしぎそうな顔をした。


「風花、緊張しているの?」

「うん、まあ……。春ヶ原のこと、うまくできるかなって」


「ありがとう。風花はみんなのことを考えてくれているんだね。優しい子だね」


 夏澄は瞳をきらめかせて微笑む。

 その瞳は、まっすぐ風花を見ていた。

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