第2章 4話 わたし、ふしぎな体験をしたのっ

 風が吹いて、欅の木がざわざわ音を立てた。風花たちの制服のスカーフも揺れる。


 木漏れ日が石畳の上を踊った。


 そんな光は夏澄たちの霊力の光を連想させた。

 顔がほころんでくる。風花はあわてて表情をもどした。


「風ちゃん、なにか、いいことあったでしょー」


 気がつくと、ひろあが風花をじっと見ていた。


「え、……な、な、なんで?! なにもないよ」

 びくっとして、風花は口ごもる。


 夏澄たちのことは、いくらひろあたちでも話せない。


 夏澄のきらきらした笑顔が想い出される。


 わたしね、ふしぎな体験をしたの。

 優しい水の精霊さんに逢ったの。


 夏澄くんの故郷は夢の世界なの。


 この世界に動物を護ってくれる場所があったなんて、信じられる? すっごいよね。きらきらだよね。


 いいたいが、絶対に話したらいけない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る