第3章 44話「お願い、優月」

「なんでよ。この仔は弱いんだよ」


 草花はやけに大きな声をあげる。


「そうとは限らないだろ。ここには、もう新しい仔を育てる余裕はないよ」


「いやっ。草花、絶対この仔はうちの仔にするっ」

「だめだぞ、草花」

「こんなに葉っぱがあるんだから、だいじょうぶ!」


  草花は胸を張る。


「鹿がいるんだから、すぐなくなる」


「そうしたら、また頑張って生やすよ。草花、頑張るから。お願いー、優月ーっ」


 猫なで声をあげた。

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