第3章 45話「だって、草花は間違ってないもん」

「無理だよ。毎回毎回、おなじこといわせないでくれ」


 草花は頬を膨らませる。


「だって、草花は間違ってないもん」


「できもしないことをできるっていうのは間違いなんだ」

「できるもんっ」

「できない」


 草花は瞳を潤ませた。


「絶対、できる!」

「できない」

「できるったら、できるものっ」

「できないよな?」


 涙を落とし始める。やがて、春ヶ原中に響き渡るように叫んだ。


「優月のばーか。とんちんかんっ。あんぽんたんっ!」


 草花はうさぎを抱きあげようとする。


 そんな彼女のワンピースを、立貴が背後から引っ張った。


 草花の両手はうさぎに届かず、空を切る。

 彼女はうーうーと唸りながら、両手を振りまわした。


 立貴は身をかがめ、草花のお腹に腕をまわす。そのまま、彼女を引きずり始めた。


 夏澄とスーフィアで視線を止め、軽く会釈し、立貴は蜜柑の木の裏側にまわっていった

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