第2章 2話 ひろあと香夜乃

 優しい精霊がいるきれいな世界に、また触れることができる。


 想い出すと、うれしくてうれしくて顔がわらってしまう。


 夏澄は仁愛の精霊だという。優しく生まれた精霊なのだ。そんなところも、彼はきれいすぎる。


「待ってよー、風ちゃんー」


 駆け出した風花を呼び止める声がした。親友の、ひろあと香夜乃かやのだった。


「一緒に帰ろうよ。あわててどうしたの?」

「え? ひろあと香夜乃こそ今日は暇なの?」


 二人は中学のときからの親友だ。だが、高校に入学すると、香夜乃は習い事を始め、ひろあには彼氏ができた。


 登校は一緒でも、下校は別々になっていた。


「うん、今日はなにもなし。一緒にのんびりしようー」


 ひろあは中学のときのままの、かわいいソプラノの声をしている。逆に香夜乃は大人びてきた。


 夏澄たちには早く逢いたいが、香夜乃たちとも久しぶりだ。


 風花は深呼吸して、逸る心を抑えた。

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