第2章 25話 夏澄より強い精霊

 夏澄にいわれ、風花は結界の中で、息を潜めるようにしていた。


「スーフィアさんたち、だいじょうぶかな」


「う、ん……。俺たちは逃げる訓練だけは欠かさないから。なにか感じたら、俺がすぐ結界内に引きもどすよ。ごめん、風花。帰りが遅くなっちゃうよね」


「まだ六時だし、だいじょうぶ。精霊がいたのが、よくないことなの?」


「林の向こうは山だし、精霊がいてもおかしくないんだけど、気配が消えたから。俺が気配を追えない精霊なら、俺より霊力が強いってことなんだ」


 どきっとした。

 風花は手を握りしめる。


「心配しないでいいよ。この辺に、そんな霊力の強い精霊はいないはずなんだ」


 そういいつつも、夏澄は時々、風花を庇うような仕草をする。


 風花は身を縮こませた。

 夏澄も体を固する。ぼんやりと、霊泉のゆらめきを眺めながら、並んでじっとしていた。

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