第2章 24話 林に現れた精霊

 夜空に銀の星が瞬き始めた。

 風花は結界の出口の前に立って、手を振る。


「じゃあ、明後日に。風花」

「うん。また……」


「待ち合わせ場所は、蓮峯山にある一本杉の前ね。飛雨が知っているから」


 風花は飛雨の案内で、蓮峯山に行くことになった。なんと、バスで一緒に行く。夏澄たちは人前に出られなくても、黒髪の飛雨なら平気ということだった。


 夏澄たちは霊体になって、空から風に乗って行くらしい。


「今なら、結界の外に誰もいない。出てだいじょうぶだよ、風花」


 あたりを見回していた夏澄がいった。


 その夏澄が、あれ、と不意に頬に緊張を走らせる。

 素早く、背後の林を振りかえった。


「今、外で精霊の気配がして、すぐに消えた」

「え?!」

 飛雨とスーフィアが顔を見合わせる。


「私が見てくる」


 いったスーフィアが、途端に姿を消した。飛雨は身構えて、林を探るように視線を彷徨わせる。

 刺されるような時間が過ぎたあと、スーフィアが、また結界の中に姿を現した。


「林の中を巡ってきたけど、誰もいなかったわ。精霊はもちろん、人も」


 いうスーフィアだが、まだ不安げにしている。


「そう、だった……?」


 夏澄も釈然としないようだった。


「私、もう一度見てくる。風花、わるいけど、もうちょっとここにいてくれる?」

「オレも行く」


 スーフィアに次いで、飛雨も結界を出て行った。

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