第2章 23話 「できるわよ」「てきないっ」

「俺だけにしか、できないんだぜ」

 飛雨は背筋を伸ばす。


「水をかけるだけなのよ。誰にでもできるんじゃないかな?」

 スーフィアが困ったようにわらった。

「そんなことねーよっ。だって、スーフィアできないじゃねーか」


「できないんじゃなくて、やらないの。分かってないわね。夏澄の体力を癒やす役目をもらっているから、心のほうは飛雨に譲っているのよ」


「んなことねーよ。オレにしかできない」

「できるわよ」

「できない」


「できるわよ。……風花、やってみて」

 スーフィアは風花を振りかえる。


「え?」


 急にいわれて、風花は口ごもる。飛雨の鋭い視線が飛んできて、風花をとらえた。


 風花は青ざめた。


「あ、の……。えっと。わたしには難しくてできないかな」


「よし、よくいった、風花。それでいいんだよっ」


 飛雨は語気を強める。


 彼はまた霊泉の水を掬うと、いくつもいくつも粒を宙に踊らせた。

 きらきらと輝く粒は、本当にきれいだった。


 風花やスーフィアにも落ちてくる。

 夏澄は瞳をきらきらさせて、あははとわらう。

 

 飛雨は夏澄の服が濡れすぎにならない程度まで、水を撒き続けた。

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