第1章 9話 スーフィアの想い
海の精霊のスーフィアは、静かにため息をつく。
風花の言葉を少し寂しく思った。
風花の記憶を消したのは自分たちだ。
それでも、そのことを寂しいと思ってしまう。
風花は忘れていても、スーフィアは彼女と何度も会っている。その分、親しみがある。
風花とはいろいろな話をした。
お互いに好きな海の話で盛り上がったこともあった。
風花は純粋な子だ。
人らしい無邪気さも好ましいと思う。できたら、このまま親しくしたい。
……でも仕方ないわよね。
夏澄に関することで、譲歩はできない。
夏澄はいつの間にか、川からあがっていた。
浮かない顔で水面を眺めている。あの様子だと、ここの水の記憶からも情報は得られなかったのだろう。
夏澄は履物を履くと、木にもたれた。
こちらに来る様子はない。
風花がいるからだ。
人である風花に関わるのを憚っているのではない。
夏澄の風花に対する態度は、何処かおかしいのだ。
恭敬したかと思うと急に気安くなる。そうかと思うと距離を取り、一貫性がない。
夏澄は風花を目の前にすると、いつもいつも戸惑う。
夏澄はどうしても、風花とうまく接することができないのだ。
……無理もないけどね。
スーフィアが心でつぶやいたとき、川原の砂利を踏む足音がした。
飛雨が風花の前に立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます