第1章 8話 精霊と人

 こうやって彼らの隣にいるだけで、風花の心まで澄んでいくようだった。


 ゆらゆら心が揺れる。


「ねえ、スーフィアさん!」


 風花はくるっとスーフィアに向きなおった。


「初めて逢った時のこと、もっと教えてっ」


 訊いたとき、スーフィアは、風花に半分背を向けていた。


 川下の夏澄を心配気に見つめている。


「ごめんね、風花。ちょっとよそ見……。あのときは……、あっ、なんか今日とそっくりだったわよ。風花は土手を降りてきて、アカシアに隠れていた夏澄に気づいたの。おなじすぎて、なんかおかしいわね」


「……」


 風花はしゅんとしてしまった。


 夏澄たちの気持ちにやっと気づいた。


 この出逢いは風花にとって幸運でも、スーフィアたちにとっては違う。


 人との出会いなんて、災いでしかないのだ。夏澄はきれいすぎて、人と関わってはいけない。


 それは、本当に理解できる。


「スーフィアさん……、いいですよ。わたしの記憶消して」


 夏澄を護りたいと風花も強く思った。

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