第3章 53話 きらきらした夏澄の笑顔

 夕焼け色の山道を、蓮峯山から出るバスは進んで行く。


 風花は窓にもたれて、オレンジ色の空を見つめていた。


 さっきまでいた春ヶ原。夢のようだったあの余韻はまだ残っている。バスという人の世界の現実の中にいると、余計に名残り惜しい。


 今日の夕焼けは、西の空いっぱいに広がっている。暖かくて優しい色だ。


 夕日は、窓からも差し込んでくる。風花だけがそれに染まっていた。


 他に乗客はいない。来たときと違って、飛雨の姿もない。


 日が暮れてきたので、風花たちは春ヶ原から帰ることにした。

 まだ聞きたいことはたくさんあったので、優月たちとはまた会う約束をした。


 帰りの道案内は必要ないからと、飛雨は夏澄たちと帰っていった。


 風花は目を閉じる。


 そうすると、別れ際の夏澄の笑顔が浮かぶ。

 きらきらとした夏澄の笑顔は、水面に反射する光のようにまぶしい。


 思い出しわらいがこみ上げてきた。風花は、口元を押さえる。

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