第3章 54話 泉の噂
今日の夏澄くんはよくわらってくれた。
一昨日は様子が変だったから、嫌われたのかと、心配だった。
でも、いつもと変わらなくて安心した。
そう思った風花は、はっとしてうつむいた。
喜んでしまったことを、後ろめたく思った。
今の夏澄はきっと、わらっていないだろう。彼の願いはまた叶わなかった。
空に湧く泉の噂は、誤解だった。
帰り際に優月に噂のことを確認した。
……それはさっき立貴が水晶玉で集めた水でしょう。
萎れた植物を癒やす以外のときに、春ヶ原の空に水が集まることはありません。
優月はそう告げた。
……今度こそ見つかるかもしれない。
夏澄はいっていたけど、結局なにも分からなかった。
いくら強い夏澄でも、傷ついていないはずはない。
風花は鞄からノートを取り出した。
今朝、飛雨とこのノートを見たときのことが思い出された。
あのときはわくわくして楽しかったのに。
希望は霧散してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます