第3章 52話 すがるような瞳

「霊力の強いあなた方なら、私たちに見えない物が見えませんか? このままでは、もしかしたらこの春ヶ原は……」


 穏やかな口調の割に、優月はすがるような瞳をしている。


 夏澄は野原を見まわした。


 瞳を閉じる。


 少しすると彼の体が水色に光り出した。

 霊力で辺りを探っているのだろう。


 ずいぶん長い間そうしていたが、やがて瞳を開けた。


「すみません。なにも……」


 そうですかと、優月は空を見上げた。


 空は浅い茜色になっていた。


 太陽の真下にある常盤万作の木の下では、草花が鹿にもたれて眠っていた。


 小毬とビー玉も一緒に眠っている。


 立貴はそんな草花を見守るように、傍らの木に寄りかかっていた。

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