第5章 12話 ちゃんとした大人

「大体、そんなことが夏澄のためになると思ってるのか?」


「ちょっとは、なるよ」

 彼は、またおでこに青筋を浮かべる。


 また、はたかれるかと思ったが、彼は横を向いて息をついた。


「おい、風花。お前、自分は精霊たちに嫌われてると思ってるだろ」


 急に話を飛ばす。


「……」

  だが、そのとおりなので、返事はできなかった。


「それ、違うぞ、少なくとも夏澄は、風花のこと大事に思っているよ」

 いう彼が、一瞬、大人びて見えた。


 風花は息を飲む。 そんな彼を見たのは初めてだった。


 さすが五百歳。


 いつもは、夏澄ー、夏澄ーと迷走ばかりだけど、ちゃんとした大人なのだ。

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