第5章 13話 大事だよ

 風花は布団にくるまり、えへへと顔を埋めた。


 さっきの飛雨の言葉が想い出される。


 大事だって……。

 えへへと、もう一時間も、風花の頬は緩みっぱなしだ。


 大事にされてるっていわれちゃった。

 あの夏澄くんに、大事にされてるって。


「本当かなー」


 風花はのけぞって天井を見つめる。

 視線を巡らせると、部屋にあるアンティークのランプが目に入った。


 暗闇の中で、霞んだ光を放っている。その光はいつもよりずっときれいに見えた。


 心に差し込んできて、体を暖かくする。


 風花は立ち上がり、カーテンを開けて窓の外を見た。 紺色の闇に、風が流れていた。


 見えないその風は、夏澄くんのように透明できれいだと思った。


 優しくて、風のように澄んでいる。

 人とは全然違う、きれいで、透明な透明な夏澄くん。


 出逢えて、こんな風に友達になれて、本当に夢みたいだ。


 わたしだって、夏澄くんが大事だよ。


  風花は出逢ってからの想い出を、ぎゅっと抱きしめる。


 飛雨くんもスーフィアさんも、みんな大事な友達だ。

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