第4章 24話 書きたいことはたくさん

「風ちゃん、ほんと楽しそうだね。いいなあ」


 ひろあが上目遣いで風花を見る。


「それ、想い出ノートに書く?」

「ひろあー」


 香夜乃が眉を寄せる。


「詮索はだめだよ」

「そんなんじゃないよ。せっかく想い出ノート作ったのに、みんな書いてくれないんだもん」


 風花たち三人は入学記念に、日記帳のようなノートを作った。


  高校生活はきっと楽しくなる。

 それをしっかり書き留めたい。そんな気持ちからだった。


 入学したばかりの頃は書くことが多かった。


 なにもかも新鮮で楽しかった。ひろあに彼氏ができたし、香夜乃は日舞を習い始めた。


  だがそのうち、書くべき出来事は起こらなくなった。


  本当は、風花は書きたいことがたくさんある。


  夏澄のことを、毎日がこんなにきらきらしていることを、書きたくて書きたくて仕方ない。


  だが、夏澄のことは、香夜乃たちには秘密だ。

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