第4章 25話 楽しいことをしよう

「いいことないかなー」


  ひろあがぼそっという。

 沈黙が流れた。


「そういえばさ……」


 風花は声を張り上げた。


「今度、駅前のデパートで平安時代がテーマの展覧会があるんだって。香夜乃、そういうの好きでしょ。行く?」


「……行きたい」

 香夜乃は目をみはった。


「じゃあ、みんなで行こう。展覧会のあとはケーキバイキングに行こう。楽しいことをしよう。今日のお礼にわたしが奢るよ」


  風ちゃんー、と、ひろあが肩を揺すってきた。


「あ、もう行かないと。日舞の時間だ」


  香夜乃が自転車に駆け寄る。


「あたしも、今日は貴人くんの練習を見て行くんだ」


  ひろあの彼氏はバスケット部のエースだ。

 名取貴人といい、学年は三年だ。


「じゃあ、また明日」


  約束ね、と、いい、風花たちは手を振りあった。

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