第1章 5話 七回の出逢い

「あの、聞いてもいいですか?」


 風花は恐る恐る切り出した。

 七回など、どうしても信じられない。 


「ねえ、飛雨くん。そんなにいつ、どこで。……あれ?」


 隣にいたはずの飛雨がいなくなっていた。

 

 あたりを見まわすと、十メートルくらい離れた川岸に寝転がり、川面を見つめている。


「……」


「ほっといてあげて」

 スーフィアは弟を見るような瞳をした。


「あれは瞑想。ああやって懺悔しているのよ。飛雨は夏澄に心底憧れてるの。夏澄みたいに柔和になりたいのよね」


「そうなんですか」


「でも、すぐ癇癪起こしちゃって。その度に谷間に落ちたみたいに悶々とするの」


 あのポーズで懺悔?


 風花は見ないふりをすることにした。




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