第2章 9話 想い出ノート

「では……」


 ふいに、ひろあが声に力を込める。鞄からノートを取り出した。


 ずっと前、高校の合格発表の日に三人で買った、桜模様のノートだ。

 ひろあは顔の前でノートを左右に振り、注目を集めようとする。


「ほら、『想い出ノート』だよ。みんなで書こうーっ」


「そんなこといったって。今日は書くようないいことなかったのに」


「だからね、今日のテーマは、未来のお祝い会のプラン」


 ひろあはにっこりと風花たちを見た。


 『想い出ノート』は、中学のときからの約束だ。


 みんなで高校生活を記録しようと決めていた。三人で日記のように好きなことを書くのだ。


 初めに書いたのは、高校一年の一学期の目標だった。


 風花の目標は、獣医になるために、成績をあげること。

 ひろあの目標は、同級生の彼氏を見つけること。

 貴人に会う前のひろあは、同級生の彼氏と一緒に修学旅行に行き、一緒に卒業するのが夢だった。

 香夜乃の目標は、和服の似合う落ち着いた大人になることだった。

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