第6章 19話 弱い風

 優月の木は泉のほとりにそびえている。目を凝らすと、木はかすかに霊力の光を放っていた。


 生きてて、くれた……っ


 駆け寄った風花は息を飲む。

 優月の木から風が放たれたからだ。風は泉の向こうのしろつめ草を萎れさせた。


 風花は恐る恐る春ヶ原を見回した。


 優月さんは本体の木で生きていてくれた。でも……。


 一面に広がっている桃色しろつめ草は、一部が萎れている。


 前のような強い風ではないし、枯れてもいない。優月の霊力が弱くなっているのだろう。


 野原を囲んでいる木々でも、数枚の葉が変色していた。


 春ヶ原全体に立貴の雨が降り注いでいた。雨は植物をよみがえらせる。


 だか、全体を癒やすには力が足りないんだろう。前見たときよりも、癒える速度が遅い。立貴も弱っているようだった。


 夏澄が瞳に涙を浮かべる。


 澄んだ水色の霊力を放ち、植物たちを癒やし始めた。

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