第6章 18話 優月の本体の木

 夏澄はぽろぽろと涙を落としはじめた。


 夏澄の表情から、優月はもういないんだと分かった。


「夏澄……」


 スーフィアが暖かい声でそっとささやいた。


「春ヶ原に行きましょう。夏澄」


 春ヶ原……?

 風花はぼんやりとスーフィアを見る。


「春ヶ原には優月の本体の木があるわ。まだ間に合うかもしれない」


「そうだ、本体が……」


 夏澄は声を震わせた。


「夏澄、霊体になって先に行け、オレは風花と後から行くよ」


「ううん。宙からでも時間はかかるよ。今は緊急だから、霊泉の力を借りよう」


 夏澄は瞳を閉じ、願うように手を胸に当てた。霊泉が輝きだし、風花たちは光に包まれる。


 ゆらっと足元が不安定になった。

 風花は夏澄の衣服にしがみついた。


 気がつくと春ヶ原の泉のそばに立っていた。

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