第6章 17話 最後の風
夏澄のとなりに立った飛雨が、夏澄の手首を握る。飛雨の手が透明に近い水色に光った。
飛雨は夏澄に霊力を送ったのだ。
それでも、さまよっている夏澄の視線が、どこかに定まることはなかった。
……もう。
息がつまって、風花はむせた。
もう、だめ。
止まってしまったかと思うような、きしんだ時間が過ぎていく。
辺りはゆっくりと静まりかえっていった。 優月の風は吹かない。 足に力が入らなくなり、風花は地面にひざをついた。
涙があふれてくる。
風花は優月の風が、最後に吹いた草地を見つめた。 湧水で、湿地のようにぬかるんだ場所だ。
ぴちゃぴちゃと、かすかな水音が聞こえる。
夏澄も、その草地で視線を止めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます