第6章 17話 最後の風

 夏澄のとなりに立った飛雨が、夏澄の手首を握る。飛雨の手が透明に近い水色に光った。


 飛雨は夏澄に霊力を送ったのだ。


 それでも、さまよっている夏澄の視線が、どこかに定まることはなかった。

 

 ……もう。

  息がつまって、風花はむせた。


 もう、だめ。

 

  止まってしまったかと思うような、きしんだ時間が過ぎていく。


 辺りはゆっくりと静まりかえっていった。 優月の風は吹かない。 足に力が入らなくなり、風花は地面にひざをついた。


 涙があふれてくる。


  風花は優月の風が、最後に吹いた草地を見つめた。 湧水で、湿地のようにぬかるんだ場所だ。


 ぴちゃぴちゃと、かすかな水音が聞こえる。


 夏澄も、その草地で視線を止めていた。

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