第6章 23話 眠らせた理由

「おいで、ビー玉、竹とんぼ」


 草花は小さな声でつぶやく。寝言のようだ。


「今日は泉で水浴びだよ。優月と立貴も一緒に遊ぼうね」

 うれしげだった。楽しい夢を見ているようだ。まるで、今荒れている春ヶ原のことを知らないようだった。


「ねえ、立貴くん。草花ちゃんは風が起きる前から眠っていたの?」


 立貴は黙ってうなずく。


 なぜだろう。

 でも、おかげで草花ちゃんは、春ヶ原を傷つけたのが優月さんだとは気づいていない。


「優月さんが眠らせたの?」


 立貴は首を振り、自分を示した。


 立貴くんも優月さんも、草花ちゃんと動物のみんなを悲しませたくなかった……。


 だから、彼らは眠らせたんだ。優月さんは今までとは違う霊力の風を生み出したんだ。

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