第6章 22話 もうひとつの風
あれ……。
ただ、春ヶ原中を眺めていた風花は、目を凝らした。
木から流れていく風を目で追う。かすかに流れる風は、植物を萎れさせる。
その中で、草花たちにだけ向かっていく風があることに気がついた。その風は、しろつめ草を弱らせることはない。
今までの優月の風とは違う。
また、その風が草花たちに流れていく。ふわっと優しい印象で、草花たちを撫でた。
風花は恐る恐る、水路から草花に歩み寄った。
じっと草花たちを見つめる。
気を失っているが、草花は微笑んでいた。
うれしげに、すうすう寝息を立てている。
動物たちもおなじだった。
さっき、彼女たちは優月の風に吹かれて次々と倒れた。だから、傷つけられたのだと思っていた。
でも、違うのかもしれない。
草花たちはただ眠らされただけのように見える。
また、風が吹く。
草花の後ろにある植物が枯れて。草花は苦しげな息をする。
だが、もうひとつの風が吹き、草花はまた微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます