第1章 25話 同じことをいうんだね

「だいじょうぶだよ、夏澄くん……」


 風花は声に力を込めた。


「水の精霊の国、きっと元にもどるよ」

「ありがとう」

 夏澄は、心底うれしそうにわらった。


「もしもどせたら、わたしにも教えてね。……わたしもね、水の精霊の国が見てみたい。わたしね、この世で一番きれいなものは、水だと思うんだ」


 風花の言葉に、夏澄は少し驚いた顔をする。

 じっと風花を見つめた。


「今の言葉……」

「え?」

「今の言葉、もう一度いってもらっていい?」


 意味が分からなかったが、風花はいわれた通りにする。

「もし、水の精霊の国が元にもどったら……」

「最後のほう」


「わたし、この世界で一番きれいなものは、水だと思う」

 いい終わったとき、夏澄は泣きそうな顔をした。


「……何度も何度も、風花はおなじことをいうんだね」


 穏やかに風花を見つめてる。なぜか、ずっとその視線を外さないでいた。


 揺れない水面のような静かな時間が過ぎていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る