第3章 31話 なつかしい風景

……懐郷。


 風花の中に、そんな言葉が浮かんでいた。

 夏澄の手をすがるように握り返す。


 一面に咲いていた花は、桃色しろつめ草だった。


 それが校庭三つ分くらいの、広い広い野原一面に咲いている。


 しろつめ草は、ぐるっと木々に囲まれている。

 桜、百日紅、花海棠、木香薔薇、雪柳、つつじ、木蓮。


 たくさんの木々が、色とりどりの花をつけていた。


 どの木も満開だ。


 花びらが舞って、しろつめ草の上に落ちる。息を飲むくらいの美しさだった。


 本当に、一年中春の世界だった。

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