第5章 35話 優月と草花の出逢い

「春ヶ原ができる前の山頂は、植物の育ちにくい、荒れた土地でした。だから、草花は豊かな土地を願っていました」


 どこから話そうかと迷いながら、優月は口を開く。


「草花は私の根元で咲く、桃色しろつめ草でした。私がまず精霊として目覚め、次に草花でした。立貴はまだいませんでした」


 優月の言葉を、風花は身を乗り出して聞いている。


 好奇心いっぱいの笑顔でいた。

 人なのに純粋だ。


 どこか、夏澄に似たところがあると、優月は思った。


「草花はとても、甘えん坊な子でした。生まれてすぐ、まず私に抱きつきました。しがみついて離れません。山の動物に抱きつくのも、大好きでした」


 かわいいーっと、風花は目を細める。


「かわいいねっ。ね、夏澄くん」


 夏澄は、まるで草花を思い浮かべているように、優しい瞳をする。


 優月の頰は緩んだ。


 草花をかわいいといってもらうのは、優月にとっても喜ばしかった。

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